2013.09.11 住宅椅子シート制作

こちらの木製のロッキングチェアですが、なんとお客様(女性)が自分で製作したそうです。まずはびっくりです。
お話を伺うと、20年程前に彫刻家の先生が教室を開き、素材と組み立て方までを用意してもらい、生徒さんはミシンノコを使ってカーブの切り欠きをしたり好きな彫刻を施し組み立てをして色を塗って自分のオリジナル作品に仕上げるというものでした。それにしても見事な彫刻でそれは素晴らしいものでした。本題の私の出番を尋ねますと、この作品、愛着があるものの、どうやっても座りにくいので何とかならないか。という相談でした。私の好きなロッキングチェアの分野でしたので、好奇心も高まりいろいろと検証をさせていただきました。

修理を施した家具

経験上ロッキングチェアの設計は、とても難しい部類に入ると自負をしております。デザインやクッション性なんて二の次、三の次です。まず普通の椅子と決定的な違いは「やじろべい」のように重心が合った点でしか理想の状態が維持できない事です。すなわち、椅子だけで静置した状態で見たときに『素敵!座りやすそう!魅力的!」とおもって、いざ座ると、人の体重も加あり重心が変化し違う位置でバランスすると「なんじゃこれ!」という掛け心地となってしまうのです。従って重心位置を実験的に調整しながら良いポイントを探らなくてはいけません。
次にソリのカーブ(脚に当たる部分です)を検証します。ソリのカーブの曲率と高さ的な重心位置のバランスで振幅と揺れ周期の時間が決まります。昔クローズアップされた「f分の1揺らぎ」という人の官能に安らぎを感じさせる周期があると言われます。これまた実験的に試作検証を繰り返しよいポイントを探ります。次に人間工学の出番です。形からも期待する通りロッキングチェアーは快適で安らぎの掛け心地をイメージします。従って休息用の椅子のバランス寸法を採用します。次にクッション性。(やっと出てきました!)長時間座っていると木の椅子では体重で押しつぶされる体のお肉がシビレ、やがて痛くなってきます。体重の対圧分布が一点に偏らず一定に分散されるようにクッションを施すと、まるで布団の上で眠るのと同様な快適性がもたらされます。ここは私たち椅子張り屋は良く知っているところです。
最後にデザインを整えます。ここまで書いたようなポイントをクリアする事が出来たら、最初にイメージしていたデザインをすりあわせるように当てはめてイメージを完成させていきます。ロックングチェアに限ってはデザインを優先して設計を進めると経験上痛い目に合うのです。したがいまして、良いロッキングチェアを設計するには試作や検証、研究がかなり伴い、設計の醍醐味を楽しめるという訳なのです。話が長くなりましたが、私のオリジナル「家族の椅子」ロッキングチェアではこのうんちくが再現されておりまので、是非ともショールームでご確認いただきたく存じます。

修理を施した家具

さて、お客様のこのロッキングチェアをどのように改造修理したかと申しますと、前後の重心調整のためソリ部分と椅子部分を前後方向に調整、椅子単体と人が乗った場合の重心合わせのためにソリ部分と椅子本体の角度を調整、揺れ周期を適正化するのとクッション性を良くするため置式クッションの厚みと固さを調整し高さ方向の重心を調整、背もたれの傾斜もかなりあるため頭の重量を支えるため枕を追加。お客様には一見クッションの追加だけ?と思われましたが左にあらずです。あちこち削ったり付け足したり角度を調整したりで改造し、塗装補修を施し何事もなかったように仕上げました。お客様には改造箇所を十分に説明し満足のご理解をいただけました。

修理を施した家具