椅子張り職人が考えるオリジナル家具『家族の椅子』

Original / Original

『家族の椅子』
concept

 

オリジナルブランド「家族の椅子」のコンセプトは、
”日常生活における家族のコミュニケーションをより豊かで活発にするための生活道具の提案”です。
家族の豊かで独創的な成長と、アイデンティティーの健やかな形成を支える一助となることを願って、
企画・デザイン・制作を行っています。

「家族の椅子」の製品は一点一点手作りで生産し、想いを込めて「使い手」の皆様にお届けしています。

背景とプロセス

幼少期、職人だった父親の背中は社会的な立ち位置から見ても大きいものでした。当時、職人はあらゆる産業の中で花形的職業のように目に映りました。親方衆が寄合いでもしようものなら、街を肩で風切って闊歩していたような時代がおぼろげな記憶として残っています。

しかし、ものづくりが時代の変化とともに合理化や大量生産、産業流通にさらされ、あらゆる業種の職人が本来あるべき士気を失い、尊い匠が姿を消していきました。同時にあらゆるものが手に入り、物質的には非常に豊かな時代となりましたが、貴重なもの、大切なものが次々に少なくなり、消費が精神的な質の高さ、豊かさに直接繋がることとは筋違いになってしまったと感じる昨今です。

職人は長年の経験や研鑽による尊い智恵や美意識を蓄え、また貴重な資源を刻むという責任を負いながら人々の暮らしに「豊かな必要」を表現すべきと思っています。その想いを表現するため2005年、工房にショールームを設け、オリジナルデザインの家具「家族の椅子」の展開を開始しました。「作り手」から「使い手」へ、私の手作り家具を通じてものづくりの大切さや、一点一点の家具が発案から完成するまでの背景や物語をお伝えし「作り手」の想いを共有していただきたいと念じています。

社会にデザインしたいもの

私たちは、家族が主人を核にリビングやダイニングなどで一緒に集まり快適に過ごせるような生活道具を作り出し、それぞれの家族がそれぞれのアイデンティティーを構築して欲しいと考えます。しかしそれは言葉や理屈で出来るものではなく、まずは家の中で家族が快適に一緒に過ごし、自然にお互いの価値観や経験値、想いや将来を尊重しあいながらじっくりと時間を掛けて育てはぐくむものだと思います。そしてその緩やかな時の流れの中で、主は家長として議長役を務めるのです。なぜなら家族というものは主人が司る最小の社会だからです。

健康な日常生活は、情報の多様化や核家族化、その他様々な要因により、一つ屋根の下で家族皆が好きなことを好きな方向を向いて行動し、お互いの理解が小さくなり・・・これでは家族皆が家で安らぎ、心の充電をするどころではありません。お父さんの役割、お母さんの役割、その中で子供は何を見て育つのでしょうか?

家は家族の器であり、家具は家族を支える生活道具です。私たちの提案する「家族の椅子」が、豊かで健康な家族の日常に戻す仕掛けとなってくれれば大成功です。

デンマーク遊学体験の中で素朴に素敵に驚いたこととして、家族一緒に知り合いの家族宅を訪問し、コミュニケーションを楽しむ、という余暇を過ごす文化があることでした。家族全員が知り合い同士というわけではなく、訪問のきっかけに誰かが知り合いであればよいのです。決して豪勢にもてなすこともなく「ホームパーティー」でお互い家族が価値観を交換し合うという何とも豊かな交流の習慣がありました。それは家族一つ一つが信頼関係で結ばれ、それが家族のアイデンティティーに感じるほどで「家族の椅子」の提案がこんな家族の成長に一助と出来ることが理想です。

ショールーム試作品もご覧いただけます。お気軽にお越しください。